拘束時間・実労働時間・所定労働時間・法定労働時間の違い
勤怠でよく出てくる4つの「時間」の関係を整理します。この区別ができると、残業代がどこから発生するのかが分かるようになります。
勤怠まわりの説明が分かりにくいのは、似た言葉が4つあるからです。 ここを整理すると、残業代がどこから発生するのかが一気に見通せるようになります。
4つの時間
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 拘束時間 | 出勤から退勤までの全体。休憩を含む |
| 実労働時間 | 拘束時間から休憩を引いた、実際に働いた時間 |
| 所定労働時間 | 会社が就業規則などで定めた、働くことになっている時間 |
| 法定労働時間 | 法律の上限。1日8時間・週40時間 |
9時出勤・18時退勤・休憩1時間の場合はこうなります。
拘束時間は9時間、実労働時間は8時間。 賃金の対象になるのは実労働時間のほうです。 勤務時間の計算では、この両方を同時に表示しています。
所定と法定がずれると「法定内残業」が生まれる
ここが実務で最も混乱するところです。
所定労働時間が7時間の会社で、8時間30分働いた場合を考えます。
同じ「残業」でも、7時間〜8時間と8時間以降では扱いが違います。
| 区分 | 賃金 | 割増 | 36協定の上限 |
|---|---|---|---|
| 所定内 | 必要 | 不要 | 対象外 |
| 法定内残業 | 必要 | 不要 | 対象外 |
| 法定時間外 | 必要 | 25%以上必要 | 対象 |
所定8時間の会社では話が単純になる
所定労働時間が8時間なら、法定労働時間と一致するので法定内残業が存在しません。 残業はすべて25%以上の割増対象です。
「残業代の出ない時間帯もある」という話が出てくるのは、 所定が8時間より短い会社に限られます。
36協定の上限に入るのは法定時間外だけ
月45時間・年360時間という36協定の上限に数えるのは、法定時間外労働だけです。 法定内残業は含みません。
所定7時間の会社で毎日1時間残業した場合、 月20日ぶんを単純に足すと20時間ですが、その全部が法定内残業なので、 36協定の上限に数える時間は0時間です。
自分の残業が上限に収まっているかは、 36協定の上限チェックで確認できます。
週40時間の壁
1日8時間以内でも、週40時間を超えれば法定時間外になります。
1日7時間×週6日=42時間の場合、 1日あたりは8時間以内ですが、週で2時間の法定時間外が発生します。
ただしこれは、変形労働時間制を採っていない場合の話です。 1か月単位や1年単位の変形労働時間制(労働基準法32条の2、32条の4)では、 あらかじめ定めた週について、40時間を超える所定を置くことが認められています。 その週に限っては、40時間を超えた分がそのまま法定時間外になるわけではありません。 自社がどちらなのかは、就業規則か労使協定で確認してください。
所定休日(会社が独自に定めた休み)の出勤で割増が必要になるのは、 多くの場合この週40時間を超えるためです。 法定休日の35%とは根拠が違う点に注意してください。
月単位でどう使うか
月給制の場合、残業代の単価は月平均所定労働時間から求めます。
基礎時給 = 割増賃金の基礎となる月給 ÷ 月平均所定労働時間
月平均所定労働時間の求め方は月平均所定労働時間の計算、 その値を使った単価の計算は月給から基礎時給を求める計算で行えます。
変形労働時間制では基準が変わる
ここまでは、1日8時間・週40時間という原則で説明してきました。 変形労働時間制を採用している会社では、この基準が変わります。
| 制度 | 基準 |
|---|---|
| 通常 | 1日8時間・週40時間 |
| 1か月単位の変形労働時間制 | 1か月を平均して週40時間以内 |
| 1年単位の変形労働時間制 | 1年を平均して週40時間以内(1日10時間・週52時間が上限) |
| フレックスタイム制 | 清算期間を平均して週40時間以内 |
たとえば1か月単位の変形労働時間制では、 あらかじめ定めた日に10時間の所定労働時間を設定でき、その日は8時間を超えても時間外になりません。
ただし、あらかじめ定めていることが要件です。 繁忙期に後から労働時間を延ばすことはできません。
管理監督者は適用が除外される
いわゆる「管理職」のうち、労働基準法41条の管理監督者にあたる人は、 労働時間・休憩・休日の規定が適用されません。時間外や休日の割増賃金も発生しません。
ただし深夜割増は適用されます。管理監督者でも、22時以降の労働には25%の割増が必要です。
なお、管理監督者にあたるかどうかは役職名では決まりません。 経営者と一体的な立場にあるか、労働時間に裁量があるか、 地位にふさわしい待遇を受けているかで判断されます。 役職名だけを与えて残業代を支払わない扱いは、いわゆる「名ばかり管理職」の問題として争われています。
用語の対応表
| 場面 | 使う用語 |
|---|---|
| タイムカードの出退勤の差 | 拘束時間 |
| 賃金計算の対象 | 実労働時間 |
| 就業規則に書かれた働く時間 | 所定労働時間 |
| 25%以上の割増が必要になる境目 | 法定労働時間 |
この4つが区別できると、給与明細の「残業手当」が何時間ぶんなのかを 自分で検算できるようになります。 就業規則で所定労働時間を確認し、勤務時間の計算で 実労働時間を出せば、どこからが25%の対象かが分かります。
この記事が扱う法令
本文で述べている法令の数値と、その原典を最後に確認した日です。
- 法定労働時間(1日8時間・週40時間) 労働基準法32条 原典を確認した日:
条文そのものを載せているのではなく、記事の説明に必要な部分をまとめています。 個別の事情への当てはめは、労働基準監督署または社会保険労務士へご確認ください。
参考にした資料
この記事の内容を計算するツール
- 勤務時間の計算
出勤時刻・退勤時刻・休憩時間を入れるだけで、実労働時間を「8時間30分」と「8.5時間」の両方の形式で計算します。夜勤など日をまたぐ勤務にも対応しています。
- 月平均所定労働時間の計算
年間休日数と1日の所定労働時間から、月平均所定労働時間を計算します。残業代の基礎となる1時間あたりの賃金を求めるのに必要な数値です。
- 残業代の計算
基礎となる賃金と残業時間から、割増賃金を計算します。月60時間超の50%割増、深夜25%、法定休日35%にそれぞれ対応しています。
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