月平均所定労働時間の求め方|なぜ残業代の計算に必要なのか
月給制の残業代を計算するには月平均所定労働時間が必要です。年間休日からの求め方と、この数字が残業代の単価を左右する理由を解説します。
月給制で働いていると、残業代の計算の前に1つ壁があります。 「1時間あたりいくらなのか」が明示されていないことです。
この単価を求めるために使うのが、月平均所定労働時間です。
計算式
年間休日120日・1日8時間の場合を、順に追ってみます。
| 手順 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 1. 年間の労働日数を出す | 365日 − 年間休日120日 | 245日 |
| 2. 年間の労働時間を出す | 245日 × 8時間 | 1,960時間 |
| 3. 12で割って月平均にする | 1,960時間 ÷ 12 | 約163.33時間 |
年間休日が105日なら約173.3時間、125日なら160時間ちょうど。 自分の会社の数字は月平均所定労働時間の計算で出せます。
なぜ「月平均」なのか
月ごとの日数は28日から31日まで変動します。 そのまま各月の所定労働時間を使えば、同じ残業1時間でも月によって単価が変わってしまう。
2月に残業した人と5月に残業した人で単価が違うのは不合理なので、 年間で均した値を1年を通じて使う、という決まりになっています。
この数字が単価を左右します
基礎時給は次のように求めます。
基礎時給 = 割増賃金の基礎となる月給 ÷ 月平均所定労働時間
分母が大きいほど単価は下がる。同じ月給25万円で比べてみましょう。
| 年間休日 | 月平均所定労働時間 | 基礎時給 | 残業1時間(25%増) |
|---|---|---|---|
| 125日 | 160.0時間 | 1,563円 | 1,953円 |
| 120日 | 163.3時間 | 1,531円 | 1,913円 |
| 110日 | 170.0時間 | 1,471円 | 1,838円 |
| 105日 | 173.3時間 | 1,443円 | 1,803円 |
年間休日が20日違うと、残業1時間あたり150円ほどの差。 月20時間の残業なら月3,000円、年間で36,000円です。
法定労働時間の上限との関係
労働基準法32条は労働時間を1日8時間・週40時間までと定めています。 週40時間を年間に換算してみましょう。
365日 ÷ 7日 × 40時間 ≒ 2,085.7時間
1日8時間で毎週均等に働く場合、この範囲に収まるのは年間所定労働日数が約260日まで、 年間休日でいえば105日あたりが分かれ目になります。
法定労働時間が定めているのは1日と1週であって、年の合計ではありません。 そのため年間休日が何日でも、判断は週ごとに行います。
年間休日が110日あっても、繁忙期に週6日勤務を入れればその週は48時間になり、 その週については法定労働時間を超えます。 逆に、年間休日が100日でも、1日の所定労働時間が7時間なら週35時間なので超えません。 変形労働時間制を採っている場合は、40時間を超える週があっても 対象期間の平均が収まっていれば違反になりません。
年間休日の数は、自分の会社を調べ始める入口として使ってください。 105日を下回っていたら、1日の所定労働時間か変形労働時間制のどちらかを 確認する、という順序になります。
年間休日が105日を下回っている求人は、1日の所定労働時間が8時間より短いか、 変形労働時間制を採っているかのどちらかであることが多いはずです。 1日7時間45分なら、年間休日は約96日まで下げられる計算になります。 月平均所定労働時間の計算は、 年間換算が2,085時間を超えていればその場で注意を出します。 これも適法かどうかの判定ではなく、確かめる場所の目印です。
求めた値の使い道
この値が分かれば、月給から基礎時給を求める計算で単価を出し、 残業代の計算で実際の金額を計算できます。
このとき分子に入れる月給は、額面そのままではありません。 割増賃金の基礎から除外できる手当が労働基準法37条5項と施行規則21条で定められており、 その7種類以外は名前が何であれ基礎に含めます。 除外できる7種類と、名称が該当しても実態が伴わなければ除外できない例は、 月給から基礎時給を求める計算にまとめています。
自分の会社の数字を見つける
就業規則に書かれているとは限らない
月平均所定労働時間は、就業規則に直接書かれていないことがよくあります。 その場合は、次のどちらかから導きます。
- 年間休日数から計算する(この記事の方法)
- 年間カレンダーの労働日を数える
年間休日数は求人票や労働条件通知書に記載されていることが多い項目です。 記載がなければ、会社のカレンダーで休日を数えても求められます。
年間休日に数えるもの、数えないもの
年間休日は「もともと労働義務が無い日」の数です。休んだ日の数ではありません。
数えるもの。
- 土日など、週ごとの所定休日
- 会社が休みと定めている祝日
- 年末年始やお盆の一斉休業(就業規則で休日と定めている場合)
- 創立記念日など、全員一律に休みと定めている日
数えないもの。
- 年次有給休暇。労働日に取得するものなので、休日には取れません
- 慶弔休暇や特別休暇。もともと労働日で、申し出て休む日です
- 欠勤と休職
夏季休暇は、定め方で扱いが変わります。 就業規則が「8月13日から15日までを休日とする」としていれば年間休日に入ります。 「夏季休暇を5日取得できる」という形なら、労働日に取る休暇なので入りません。 同じ夏休みでも、書き方が違えば分母が変わります。
入れ間違えると、単価がずれます。 年間休日を5日多く数えれば、年間所定労働日数はその5日ぶん少なくなる計算です。 1日8時間なら年40時間、月平均でおよそ3時間短くなり、分母が縮むぶん基礎時給は上がります。 実際より高い単価で検算すると、足りている残業代を「不足している」と読み違えます。
「月の所定労働時間」と取り違えない
給与明細に「所定労働時間 160時間」と書かれていることがありますが、 これが月平均なのか、その月の実際の所定労働時間なのかは区別が必要です。
その月の実際の日数で計算していると、月ごとに残業単価が変わります。 違法ではありませんが、一般的ではありません。 毎月の明細で単価が動いている場合は、計算方法を会社に確認してみてください。
変形労働時間制の場合
1か月単位や1年単位の変形労働時間制を採用している会社では、 期間内の労働時間を平均し、週40時間以内に収める形です。
この場合も月平均所定労働時間の考え方は同じですが、 時間外労働の判定基準が通常と異なります。 自分の会社がどの制度を採用しているかは、就業規則で確認できます。
必要なのは、年間休日数という1つの数字だけです。 そこから月平均所定労働時間が求まり、基礎時給が求まり、残業代の検算までつながります。 その1つの数字は、求人票か労働条件通知書に書かれています。
この記事が扱う法令
本文で述べている法令の数値と、その原典を最後に確認した日です。
- 法定労働時間(1日8時間・週40時間) 労働基準法32条 原典を確認した日:
条文そのものを載せているのではなく、記事の説明に必要な部分をまとめています。 個別の事情への当てはめは、労働基準監督署または社会保険労務士へご確認ください。
参考にした資料
この記事の内容を計算するツール
- 月平均所定労働時間の計算
年間休日数と1日の所定労働時間から、月平均所定労働時間を計算します。残業代の基礎となる1時間あたりの賃金を求めるのに必要な数値です。
- 月給から基礎時給を求める計算
月給と月平均所定労働時間から、割増賃金の基礎となる1時間あたりの賃金を計算します。除外できる手当を差し引いた金額で計算できます。
- 残業代の計算
基礎となる賃金と残業時間から、割増賃金を計算します。月60時間超の50%割増、深夜25%、法定休日35%にそれぞれ対応しています。
最終更新日: