月給が最低賃金を下回っていないか確かめる方法
最低賃金は時給で定められています。月給制の場合にどう換算して比較するのか、比較から除外される手当は何かを整理します。
最低賃金は時給の金額で定められています。 月給制で働いている場合、そのままでは比較できません。
換算の手順
まず時給に直す
時給換算 = 月給(対象となる賃金のみ) ÷ 月平均所定労働時間
たとえば月給18万円、月平均所定労働時間173時間なら次のようになります。
180,000 ÷ 173 ≒ 1,040円
この1,040円を、お住まいの都道府県の最低賃金と比べます。
最低賃金の充足チェックでは、 月給と月平均所定労働時間を入れると換算と判定を同時に行います。
比較に含めない賃金がある
ここが見落とされやすい点です。 最低賃金と比較する賃金からは、次の6つを除外します (厚生労働省「最低賃金の対象となる賃金」)。
- 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
- 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
- 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金
- 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金
- 22時から翌5時までの労働への賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分
- 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当
つまり、総支給額で比較してはいけません。
3と4は、その労働に対して支払われる賃金そのものを除きます。 「超える部分」に限られるのは5だけです。
時給でも月給でもないとき
換算のしかたは最低賃金法施行規則2条が決めています。割る数が賃金の決め方ごとに違います。
| 賃金の決め方 | 割る数 |
|---|---|
| 日給 | 1日の所定労働時間数(日によって違うなら、1週間の1日平均) |
| 週給 | 週の所定労働時間数(週によって違うなら、4週間の1週平均) |
| 月給 | 月の所定労働時間数(月によって違うなら、1年間の1か月平均) |
| 歩合給(出来高払制その他の請負制) | その賃金算定期間に出来高払制で労働した総労働時間数 |
歩合給は、その期間に出来高払制で計算された賃金の総額を、総労働時間数で割ります。 売れた月と売れない月で時間額が動くため、1か月ぶんを見ただけでは判断できません。 固定給と歩合給を併せて受け取っている場合は、それぞれの行の方法で時間額に直してから合計します。
年俸制の場合、毎月支払われる部分の換算は月給と同じです。 年俸の一部を年2回の賞与としてまとめて受け取る形なら、 その部分は1か月を超える期間ごとの賃金にあたり、比較の対象から外れます。 年俸額の12分の1をそのまま当てはめると、実際より高く見積もることになります。
最低賃金額は毎年変わります
地域別最低賃金は毎年10月頃に改定され、都道府県ごとに金額が異なります。
このサイトの計算ツールが最低賃金額を持たず、 利用者に入力していただく形にしているのはこのためです。 金額表を埋め込むと、更新が遅れたときに誤った判定を表示してしまいます。
最新の金額は厚生労働省のページでご確認ください。
下回っていた場合
最低賃金法により、最低賃金額を下回る賃金を定めた契約はその部分が無効となり、 最低賃金額で契約したものとみなされます。 つまり、差額を請求できます。
また、地域別最低賃金を下回る賃金しか支払わなかった場合、 使用者には50万円以下の罰金が定められています。
差額をさかのぼれる期間には限りがあります。 賃金を請求できる期間は労働基準法115条で5年とされ、附則143条3項により当分の間は3年です。
まずは給与明細と、就業規則に定められた所定労働時間を確認してください。 そのうえで換算した金額が下回っている場合は、 お近くの労働基準監督署に相談できます。
特定最低賃金について
一部の産業には、地域別最低賃金より高い「特定最低賃金」が設定されています。 該当する産業で働いているなら、適用されるのはそちらです。
自分の職場がどちらの対象かは、厚生労働省または都道府県労働局のページで確認できます。
固定残業代が含まれている場合
求人票の「月給25万円」に固定残業代が含まれていることがあります。 この場合、最低賃金との比較で使えるのは固定残業代を除いた金額です。
たとえば「月給25万円(固定残業代45時間分5万円を含む)」なら、比較対象は20万円です。 月平均所定労働時間173時間で割ると約1,156円になります。
固定残業代の内訳が求人票に書かれていない場合、労働条件通知書か就業規則で確認できます。 金額と対応する時間数の両方が明示されていない固定残業代は、 そもそも有効性そのものが争われます。
パート・アルバイトの場合
時給制なら換算の必要はなく、そのまま比較できます。 ただし、次の点に注意してください。
- 研修期間中の時給も最低賃金を下回れません。 「試用期間だから」は理由になりません
- 都道府県ごとに金額が違うため、働いている場所の最低賃金で比較します (住んでいる場所ではありません)
- 複数の勤務先がある場合、それぞれの勤務先ごとに判断します
2つ目は、県境をまたいで通勤している人が間違えやすいところです。 判断の基準は事業場の所在地であって、自分の住所ではありません。
確認の手順
- 給与明細を用意する
- 上の6つ(臨時の賃金・賞与など・時間外・休日・深夜の超える部分・精皆勤/通勤/家族手当)を除いた金額を出す
- 就業規則で月平均所定労働時間を確認する(分からなければ年間休日から計算する)
- 2を3で割って時給換算する
- 厚生労働省のページで、働いている都道府県の最低賃金を確認する
- 4と5を比べる
この計算は最低賃金の充足チェックで自動化できます。
手順のうち一番つまずきやすいのは2番、除外する手当の切り分けです。 給与明細の項目名だけでは判断できないこともあるので、 迷ったら「これは残業に対する支払いか」「これは毎月必ず同額か」を 基準に考えると整理しやすくなります。
この記事が扱う法令
本文で述べている法令の数値と、その原典を最後に確認した日です。
- 最低賃金の対象から除外される賃金(6項目) 厚生労働省「最低賃金の対象となる賃金」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/chingin/newpage_43898.html 原典を確認した日:
条文そのものを載せているのではなく、記事の説明に必要な部分をまとめています。 個別の事情への当てはめは、労働基準監督署または社会保険労務士へご確認ください。
参考にした資料
この記事の内容を計算するツール
- 最低賃金の充足チェック
時給または月給を時給に換算し、お住まいの地域の最低賃金を満たしているかを判定します。最低賃金額はご自身で入力していただく方式です。
- 月給から基礎時給を求める計算
月給と月平均所定労働時間から、割増賃金の基礎となる1時間あたりの賃金を計算します。除外できる手当を差し引いた金額で計算できます。
- 月平均所定労働時間の計算
年間休日数と1日の所定労働時間から、月平均所定労働時間を計算します。残業代の基礎となる1時間あたりの賃金を求めるのに必要な数値です。
最終更新日: